運動を「クエスト」に変えた位置情報ゲームの行動設計
Pokémon GOとは
Pokémon GOは、現実世界を歩きながらポケモンを探し、捕まえ、育て、バトルする位置情報ゲームです。
通勤、散歩、ジョギングなどの日常の移動がPokémon GOに反映され、相棒ポケモンのCandy、タマゴ孵化、週間歩行マイルストーン報酬などにつながります。
また、Routesでは、現実世界の決められた道をたどることで、特別なボーナスや報酬、Route Badgeを得られる仕組みがあります。
つまりPokémon GOは、スマホ画面の中だけで完結するゲームではありません。
現実世界そのものをゲーム盤に変えたサービスです。
① 歩行に意味を与える
普通に歩くことは、多くの人にとって退屈です。
「健康のために歩こう」と思っても、続かない人は多い。
しかしPokémon GOでは、歩くことに複数の意味が生まれます。
ポケモンに出会う。
タマゴが孵る。
相棒がCandyを見つける。
ルートを完了する。
バッジが増える。
これにより、歩行は「運動」ではなく「探索」になります。
② 科学的根拠:行動の再意味づけ
Pokémon GOの設計は、行動科学的に見ると、退屈な行動に新しい報酬と意味を与える設計です。
運動そのものを目的にするのではなく、
「ポケモンを捕まえるため」
「タマゴを孵すため」
「イベントに参加するため」
という目的に置き換えています。
このような設計は、自己決定理論の観点からも説明できます。自己決定理論では、人の動機づけには、自律性、有能感、関係性という3つの心理的欲求が重要だとされています。
Pokémon GOでは、
- 自律性:自分のペースで歩ける
- 有能感:捕獲、XP、図鑑、バッジで成長が見える
- 関係性:レイドやイベントで他者とつながれる
という形で、運動にゲーム的な意味が付与されています。
③ 実際に歩数は増えるのか
Pokémon GOが身体活動に与える影響については、複数の研究があります。
BMJに掲載された研究では、Pokémon GOの利用開始後に歩数が増える傾向が示されました。ただし、その効果は時間とともに弱まる可能性も指摘されています。
また、2020年の系統的レビュー・メタ分析では、Pokémon GOのプレイは1日あたり約1,446歩の増加と関連していたと報告されています。ただし、効果は統計的には有意でも、臨床的には中程度から控えめと評価されています。
ここが重要です。
Pokémon GOは魔法の健康アプリではありません。
でも、歩く理由を作る力はあります。
④ なぜ飽きても戻ってくるのか
Pokémon GOは、常に新しいイベントを用意します。
限定ポケモン。
特別なリサーチ。
コミュニティ・デイ。
レイド。
ルート。
コレクションチャレンジ。
これにより、ゲーム内に「今日外に出る理由」が生まれます。
人は抽象的な目標よりも、具体的なきっかけで動きやすい。
「健康のために歩こう」よりも、
「今日だけ出るポケモンを捕まえに行こう」
の方が行動につながりやすいのです。
Rule Questまとめ
Pokémon GOは、運動を強制していません。
代わりに、歩くことをクエストに変えています。
これはゲーミフィケーションの非常に美しい事例です。
行動を変えたいなら、根性を求めるのではなく、行動の意味を変える。
Pokémon GOはそのお手本です。
参考
https://selfdeterminationtheory.org/SDT/documents/2000_RyanDeci_SDT.pdf
https://www.bmj.com/content/355/bmj.i6270



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