マスタリー、バッジ、復習設計が作る学習のルール
Khan Academyとは
Khan Academyは、無料で学べるオンライン学習プラットフォームです。
数学、科学、経済、コンピュータ、試験対策など、幅広い学習コンテンツを提供しています。
Khan Academyには、学習進捗を追跡するMastery Systemがあります。Course and Unit Masteryは、コース全体の学習進捗を追跡するための仕組みです。
また、Mastery levelsにはAttempted、Familiar、Proficient、Masteredなどの段階があります。
つまりKhan Academyは、動画を見るだけの学習サービスではなく、できるようになった状態を段階的に可視化するサービスです。
① 学習の弱点は「進んでいる実感」がないこと
学習は、成果が見えにくい活動です。
今日勉強した。
でも、本当に理解できたのか分からない。
どこまで進んだのか分からない。
次に何をやればいいのか分からない。
この状態が続くと、人はやめてしまいます。
Khan Academyは、学習の進捗をMasteryとして見せます。
これにより、
「まだ途中」
「少し分かってきた」
「習熟した」
「マスターした」
という状態が分かります。
② 科学的根拠:有能感
Khan Academyのマスタリー設計は、自己決定理論の有能感と相性があります。
自己決定理論では、自律性、有能感、関係性が内発的動機づけに重要だとされています。
学習者は、
「自分は前に進んでいる」
「できることが増えている」
「この単元は理解できた」
と感じることで、続けやすくなります。
Khan AcademyのMasteryは、この有能感を可視化する仕組みです。
③ Mastery Challenges:復習を仕組みにする
Khan Academyには、Mastery Challengesがあります。
公式ヘルプでは、Mastery Challengesは、以前に学んだスキルを復習・練習するための仕組みで、パーソナライズされたスキルの復習や、間隔を空けた練習に関連する設計として説明されています。
これは非常に重要です。
学習は、一度やっただけでは定着しません。
時間を空けて思い出す必要があります。
④ 科学的根拠:検索練習と分散学習
学習科学では、ただ読み返すよりも、思い出す練習をすることが記憶定着に有効だとされています。
練習テストと分散学習は、さまざまな学習者や学習条件において有効性が高い学習法として評価されているレビューもあります。
Khan Academyの問題演習やMastery Challengesは、この考え方と相性があります。
動画を見る。
問題を解く。
間違える。
復習する。
また挑戦する。
Masteryが上がる。
この流れが、学習をゲームのように進める構造になっています。
⑤ バッジ:学習の節目を祝う
Khan Academyにはバッジもあります。
ストリークやコースレベルに応じた新しいバッジもあります。
バッジは、学習成果の小さな表彰です。
ただし、バッジだけで学習が深まるわけではありません。
大事なのは、バッジが学習行動と自然につながっていることです。
Khan Academyの場合、学習の進捗、復習、習熟とバッジがつながっているため、単なる飾りになりにくいのです。
⑥ 教育ゲーミフィケーションの注意点
教育にゲーム要素を入れれば、必ずうまくいくわけではありません。
教育分野のゲーミフィケーションに関するメタ分析では、ゲーミフィケーションは学習や動機づけに有効な可能性がある一方で、設計や文脈によって効果が変わることも示されています。
つまり、Khan Academyがうまいのは、ポイントやバッジを足しているからではありません。
学習に必要な復習、進捗確認、習熟確認を、ゲーム的に見える形にしているからです。
Rule Quest評価
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 学習設計 | ★★★★★ |
| 成長実感 | ★★★★★ |
| 復習設計 | ★★★★★ |
| バッジ設計 | ★★★★☆ |
| 教育効果との相性 | ★★★★★ |
| 総合評価 | 9.4 / 10 |
Rule Questの結論
Khan Academyは、学習をゲームにしているのではありません。
学習の成長過程を、見えるルールに変えているのです。
学ぶ。
試す。
間違える。
復習する。
習熟する。
この学習の流れを、Masteryとバッジによって可視化している。
だから、学習者は「次に何をすればいいか」が分かり、続けやすくなるのです。
参考
https://www.whz.de/fileadmin/lehre/hochschuldidaktik/docs/dunloskiimprovingstudentlearning.pdf
https://selfdeterminationtheory.org/SDT/documents/2000_RyanDeci_SDT.pdf
