推薦アルゴリズムと変動報酬が生む没入設計
TikTokとは
TikTokは、短尺動画を中心としたSNSです。
最大の特徴は、ユーザーがフォローしている人の投稿だけでなく、個人ごとに最適化された「おすすめ」動画が次々に表示されることです。
おすすめに影響する要素としては、視聴完了、スキップ、いいね、共有、コメント、フォロー、動画情報、言語設定、地域などがあると言われています。
つまりTikTokは、ユーザーの行動を見ながら、次に見せる動画を調整し続けるサービスです。
① スワイプするたびに「次」がある
TikTokの体験はとてもシンプルです。
動画を見る。
面白くなければスワイプ。
次の動画を見る。
この操作に迷いはありません。
しかも、次に出てくる動画が面白いかどうかは、見てみるまで分かりません。
ここが強いポイントです。
② 科学的根拠:変動報酬
TikTokのような体験は、行動心理学でいう変動報酬と相性があります。
報酬が毎回必ず得られるわけではなく、予測できないタイミングで良い体験が得られると、人は行動を繰り返しやすくなります。
強化スケジュール研究では、固定的な報酬よりも、変動的な報酬が行動の持続に影響することが検討されています。近年の研究でも、固定比率と変動比率の強化スケジュールが行動に与える影響が実験的に調べられています。
TikTokで言えば、
「次は面白いかも」
「もう1本だけ」
「これは当たりだった」
というループです。
③ パーソナライズが変動報酬を強化する
TikTokの怖いところは、完全なランダムではないことです。
ランダムに見せているのではなく、ユーザーが反応した情報をもとに、だんだん好みに寄せていきます。
TikTok公式も、For Youフィードはユーザーの好みを反映し、関心や「興味がない」と示した情報に基づいて調整されると説明しています。
つまりTikTokは、
完全にランダムではない。
でも、完全に予測できるわけでもない。
このバランスが強いのです。
④ 注意点:没入設計は健康リスクもある
TikTokの設計は非常に強力ですが、健全性の問題もあります。
短尺動画や無限スクロールのような設計は、時間感覚を失わせやすく、いわゆる「ドーパミンスクロール」としてメンタルウェルビーイングへの影響も議論されています。
Rule Questの視点では、TikTokは学ぶべき設計ですが、安易に真似すべき設計ではないと考えています。
ユーザーを動かす力が強すぎるからです。
⑤ TikTokの本質
TikTokは、動画投稿アプリではありません。
ユーザーごとに最適化された、興味のスロットマシンに近い設計です。
何が出るかわからない。
でも、たまにものすごく刺さる。
だから、もう一回スワイプしてしまう。
Rule Questのまとめ
TikTokは、ユーザーの好みに合わせるだけのサービスではありません。
予測できない楽しさと、精密なパーソナライズを組み合わせた没入設計です。
人を動かす力は非常に強い。
だからこそ、設計者には倫理も必要になると考えています。
